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近親愛




桃色珊瑚桃色珊瑚
(1993/06)
図子 慧

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以前取り上げたこちらの本の再読を果たしたので、改めて感想を述べたいと思います。




※ネタバレ注意


関東の大学に通う女子大生である主人公(20)は、
病気の父親を看病するため病院通いに明け暮れていた。
母はすでに亡く、美男で社交的でどこか陰がある完璧な兄(28)は海外勤務をしている。
主人公にとって代償のない愛を捧げてくれるのは、
父親と、幼い頃に自らを恥ずかしめた兄の友達の幻影だけだった。
兄は優しい兄を演じる傍ら、主人公に対しいつも冷たく無関心な素振りを見せていた。

自分が他よりも恵まれていることはわかっている、
それでも今まであったものを突然失うのは辛かった。
父の死を目前にして、主人公は父を失えば自分は一人になってしまう悲壮感にかられていた。
主人公はその寂しさを埋めるため、大して好きでもない相手らに身を委ねていくのだった。
「重なりあい、触れ合う瞬間に、肉体は存在する」(p130)
肉体をぶつけあいながら、性と生の歓びに浸る主人公は、その心の奥でいつも兄の友達の名前を叫んでた。


そんな中、海外勤務に明け暮れていた兄(28)が父を見舞うために帰ってくる。
兄は優しくてデキがよく美男であるため、不思議と周囲に人を寄せ付けていた。
主人公はそんな兄を尊敬と好意の視線を向けていた。
しかし心の中では兄は自分に対して無関心であるという思いで埋め尽くされていた。
 
「いつかまた尭文(兄)は(海外に)いってしまうだろう。
 きょうだいは、おのおのが自分の巣を見出すまでの、短い結びつきにすぎないのだから。
 しかし、肉体をつなぎあわせなくてもたしかに存在を感じられるのは兄しかいなかった。」
(p170)

主人公は兄の支えがあり、父の死を乗り越えることができた。
その結果、より一層兄へ依存していく気持ちが高まっているのが見て取れた。

「叔母は血の呪縛を振り切った。だから、いま笑っていられるのだ。
 自分も、そうできる日が来るのだろうか」
(p204)

親戚一同の会合にて、叔母が主人公の父がいかにハンサムでモテモテであったことを述べた。
そのため結婚する際にもヤキモチを焼いて仕方がなかったことを。
主人公も果たして叔母と同じく兄の存在を振り切ることができるのか気がかりしていた。



その後主人公は、昔自分を貫いた兄の友達の正体が、当時気を病んでいた兄本人であった事実を知る。
兄は妹に一線を越えた愛を抱いていたからこそ妹に近づかなかったのだった。
主人公はその事実を知ると衝撃や憎しみよりも安堵に満ちた表情を兄に向けていた。
停止していた時間が今ゆっくりと動き出すかのように…。
というところで物語は終了している。



全体を通して思うのは、
美女でどこか近寄りがたい部分を持った主人公が、
誰にも入り込めない世界を持っているがゆえに孤独を感じているという物語だったということだった。
周りに表面上溶けこむことはできるものの、深く誰かと繋がるには体を委ねるしかないという考えを持っているところが本書の記述からも伺える。
そういった一方向な考えを植えつけてしまったのは、過去に主人公を汚した兄の友達による犯行であるのではないかと考える。
自分の人生を壊した兄の友達、もとい兄の犯行を恨むことなく受け入れたのは、
他のどの男達よりも兄を愛していたからにほかならないだろう…。




主人公はこれからどうするんだろう?
禁忌による背徳感を背負いながら生きていくのだろう?っと読後も不透明感が残った。
お兄ちゃん子だった妹は、一生兄の支えに依存しながら生きていかなければならないのだろうか?と、
なぜか妹という存在をとても心配に思うようになった。
妹キャラが好きだからである。


そしてある時その考えを払拭する作品に出会った。
『北斗の拳』である。

攫われた妹を助けるため自身のすべてを捧げてでも助けようとした南斗水鳥拳のレイ。
その姿、その優しさ、妹に対する想いというものにとても心惹かれるものがあった。

世紀末という水も食料もなく筋骨隆々の男性達が蔓延る絶望の時代の中で、
迷いながらも立ち上がることを決心した妹アイリに対してレイはこのような台詞を述べた。

「あの抗う術を知らず周囲の風に流され人形のように生きるしか出来なかったアイリが!!
 もう おれに弱点はない。アイリはおれから離れた。
 自分の意志で生き! 自分の意志で死んでいくだろう!!」

 

手のかかる最愛の妹の成長を認め、兄から離れて自立し始めたことをレイが感じ取ったこのシーンは、
兄妹愛というものの果てを垣間見た気がした。


兄妹というものは親子とはまた違った絆で結ばれていると思う。
夫婦は他人だが兄妹は同じ血を通わせている点もそうだが、
やはり同じ環境と境遇を共に生き抜いてきた独自の関係がそこにはあると考える。
その中で生まれた絆は他の誰の血も入り込めない強い気持ちで結ばれているのではないだろうか。
だからこそ、互いの成長を分かち合うことができ、幸せを願うことができるのだろう。


桃色珊瑚の感想を書きながら主人公の心情を思い返しているうちに、
主人公は初めから兄の友達ではなく兄に思いっきり一線を越えたような感情を抱いていたのがよくわかりました。
これならば、読みながら「もしかして」となってしまわれる方もいらっしゃりそうであります。

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コメント

うおおんっ、ごめんなさい、私が読後の感想も聞きたいだなんて無理をいってしまってー

>>他のどの男達よりも兄を愛していたからにほかならないだろう…。
ここまでの文章を見て、自分の考えのレベルとYRNさんの考えの深さの違いをかなり感じました、、、
この作品のまとめみたいなものですが
新たに納得するようなこともあります
私は表面的なことでさえ読み取れていたのか怪しかったので(・ω・;)

>>禁忌による背徳感を背負いながら生きていくのだろう?っと読後も不透明感が残った
これですよね、当人たちは安息手に入れましたが、
決してはたから見て問題がないとはいいづらいですものね、倫理的な意味ではなくて

>>手のかかる最愛の妹の成長を認め、兄から離れて自立し始めたことをレイが感じ取ったこのシーンは、
兄妹愛というものの果てを垣間見た気がした。
もしアイリさんがレイに依存しきっていて、レイもそれをすべてと思っていたら、
劇中にあったように不慮のときに様々な弊害はでますものね、もちろんそれだけではないですが
世紀末の世界ではない尭文と透子の世界でも、
透子の父のように万が一ということもありますし、、、
その依存しきった関係に危機感を覚えたのもあり、
尭文のあのような態度になったのでしょうが、
つい尭文や透子の状況やすることがちょっとでも違ったらという、
結末のたらればも考えてしまいます、すいません無粋ですね

>>やはり同じ環境と境遇を共に生き抜いてきた
この桃色珊瑚も尭文と透子さんが兄妹だったからこそ、
ここまで悲しく切なく癖のあるような作品になったのでしょうね
兄妹とは相手の喜びを望むものでも、
同じ境遇での互いの成長を望むなど恋人や親子とは違った形というのがこう、美しいです
YRNさんの言葉かりまくりですがぇ

すばらしい感想や考えをお聞かせいただきありがとうございました
上手く語り合いをできればよかったのですが、如何せん私のレベルでは読み切れているか怪しく申し訳ないです、すいません

>精悍な信たまさん

こんにちは!!いつもコメントありがとうございます!
返信が大変遅くなり誠に恐縮でございます…。


>自分の考えのレベルとYRNさんの考えの深さの違いをかなり感じました、、、
>この作品のまとめみたいなものですが
>新たに納得するようなこともあります
>私は表面的なことでさえ読み取れていたのか怪しかったので(・ω・;)


 いえいえいえいえ、こちらこそありきたりな表面的なことしか読み取れていませんよorz
 こうだったらいいなぁ~という、願望が主ですし…ww。
 信たまさんのお話をお聞きしながら、自分こそ新たに気がつくところばかりでした!
 こうやって理解を共有しあえるってとても楽しかったです…。
 色々な解釈ができる作品って貴重ですよね…。

>これですよね、当人たちは安息手に入れましたが、
>決してはたから見て問題がないとはいいづらいですものね、倫理的な意味ではなくて


 そうですよねえ…。
 日本ではタブーとされていることであることをどうしても当人達は意識せざるを得ないものもあるかと思います…。
 で、でもでも、やはり、透子は兄以外とは幸せになれないじゃないか…?といった考えすら浮かぶほどなので…、
 これがやはり彼らの幸せになるのではないかと思います…。
 勿論旅立てないという意味で当人達にとって良いとはいえないのですが…。


>つい尭文や透子の状況やすることがちょっとでも違ったらという、
>結末のたらればも考えてしまいます、すいません無粋ですね


 尭文は透子を突き放し過ぎたのかもしれませんね…。
 あんな行為をしてしまったのでは仕方ないかもしれませんが…。
 尭文がレイくらい、どこまでも妹を心配する兄だったら、
 確かにもう結末も違っていたでしょうね。
 こう考えると兄妹の関係って難しいのですね…。
 突き放し過ぎても依存させすぎてもいけないという…。


>この桃色珊瑚も尭文と透子さんが兄妹だったからこそ、
>ここまで悲しく切なく癖のあるような作品になったのでしょうね
>同じ境遇での互いの成長を望むなど恋人や親子とは違った形


 おっしゃるとおりだとおもいます!
 普通の男女の関係には存在しない感情が渦巻いていそうなものですからね…。
 同じ境遇だからこそ互いの幸せを願えるんですよね…。
 将来的に結婚したり等で別の道を歩むことになっても、
 どこかでいつまでも結ばれているというのが美しき絆を感じさせます…。

>如何せん私のレベルでは読み切れているか怪しく申し訳ないです、すいません
 まったくそんなことないですよ!
 信たまさんの読後のご感想をお聞き出来て本当に嬉しかったですよ!
 レベルといったものではなくて、ただお話をお聞きできたことが幸せでした!
 この度は本当にお付き合いくださってありがとうございました!! 
 今度は信たまさんのシン・エヴァのご感想をお聞きしたいですw

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